12/25/2023

雪山でプチ遭難 Part 1

生まれて初めて真剣に、「私はここで死ぬかもしれない。。」と初めて思った出来事があった。

忘れもしない冬至の翌日の出来事、つまり数日前のこと。お金をコツコツ一生懸命貯めて、今年スノーマシーンを買った。3人乗っても十分スペースがある、かなり大きなエンジンで全長3.4メートル、約300キロの重量。ボーイズは我が家にやって来たスノーマシーンに湧き立っていた。雪が十分降ったので、州や連邦政府が管轄している野生動物保護区でスノーマシーンに乗れるようになった。夫が早速州が経営する山小屋を予約した。この山小屋は道も何もない僻地の湖畔に半世紀以上前に建てられたもので、どの山小屋も日本語で言う掘立小屋という表現がしっくりくる。ちなみに、電気も水も通っておらず薪ストーブとベッドとテーブルがあるだけ。この予約した山小屋は我が家からは約100キロ(62マイル)離れている。道路から近めの山小屋や人気のハイキングスポットにある山小屋は宿泊料が75ドルなのだが、ここの山小屋は超僻地にあるせいか一泊25ドルだった。ここで何でこんなに安いの?と嫌な予感がする。そして、ただでさえ旅行や変化が嫌いな私は、まず行ったこともない超僻地に乗り慣れていないスノーマシーンで極寒の中向かうことに乗り気になれない。夫がものすごく楽しみにしているのと対照的に私は家でゆっくりしたかったなー!と思っていた。

当日、自宅からスノーマシーンをトレーラーに乗せ、トラックで牽引して舗装されている最北の道まで進んだ。そこがちょうど駐車場になっているので、そこにトラックを駐車した。スノーマシーンにそりを取り付けて、そりの中にガソリン、スノーシューズ、アイススケート、スキー、食べ物、着替えなどを載せた。ただ、息子の足が大きくなって今までずっと履けていたスノーシューズを履けなくなっていることに前日の夜に気づいた。どうせ息子は履けないから、と思ってトラックに息子のスノーシューズを置いてきた。夫と私用に、二足だけスノーシューズを積んでいた。これが後に大きな間違いとなることにその時は思いもしなかった。

スノーマシーンに乗り換えて45キロ(28マイル)先にある山小屋まで向かった。気温はマイナス10度(14F)で風を切ると更に寒い。最初の1/3ほどは道が広くて平らなので早く進むことができた。次の1/3はハンノキや白樺の木が雪の重みで垂れて、行く道を阻んでいる。木の枝を避けながらゆっくり進んだので時間がかかった。

後半の6キロ(4マイル)程度がクリークで、ここが夫が心配していた難所だった。事前に毎日更新されるNASAの衛星写真でクリークがちゃんと凍っていそうか、危ない場所はないかなど確認していた。一年前の同じ時期にクリークの表面が凍っているかも確認していたけれど、はっきり言って毎年冬の天候はかなり変わるので当てにならない。NASAの画像も拡大すると画像が荒い。そしてスノーマシーンが通れるほどの氷の厚みがあるかどうかは複合要因が多くて確実に判断することは難しい。例えば、氷の上に雪が乗っていると雪が保温材料となって雪の下の氷は割れやすく危ない。雪が全くない氷の表面の方が安全なのだ。そして湿地帯はバクテリアの活動が多いので湖などより水温が高くなる。クリークは常に水が流れているので、流れのない湖などに比べてなかなか表面が凍らない。クリークの表面が凍り出したとしても、氷のすぐ下を流れている小川がクリークからはみ出て氾濫し、氾濫した部分が凍らず人が落ちて事故の要因になることも多いらしい。ネットでどうやってこのクリークを安全に渡ればいいか調べていたけれど、人気のない場所なので(後でなぜか分かる)ネットにもどのルートで行けば安全なのか情報がなかった。ちなみに、クリークというと多分日本語では小川という表現になると思うのだが、このクリークはそんな可愛いものじゃない。このクリークの周りは広域な湿地帯になっていて、クリークと湿地帯を含めた幅が100メートル(325ft)くらいある。湿地帯には大きな狼の足跡がいくつも見えた。

クリークと湿地帯にスノーマシーンで入り、できるだけ木々が生えている岸に沿って走った。岸には木が密集して生えているので、そこは運転できない。最初は不安になる部分もそこまでなく、かなり早いペースで進んでいった。山小屋からあと少しと言うところで、夫が「衛星写真によると、ここからクリークと岸の間にある地面がほぼなくなる部分だから気をつけて行こう」と言った。そして、だんだん凍っていないクリークの水面が左手に見えてきた。それでも進んで行ったところ、目の前に凍っていない水面が所々現れて、それを避けて前に進むのは明らかに無理だった。右手は木の生い茂った雪山。左側と目の前には水面が見えているクリーク。夫がスノーマシーンから降りて、ちょっと水面の様子を見に行くと言った。降りて数歩歩いたところ、夫の左足が氷を突き破った。私が「もうこれは絶対にあかんわ。危なすぎる。すぐに今から来た道を引き返して家に帰ろう」と言った。その直後、スノーマシーンの前部分が氷を突き破って水面に落ちてしまった。前部にはエンジンがあり、エンジンが水に浸かってしまったらもうスノーマシーンは壊れてしまって運転できなくなる。